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2月24日
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『内政からいっても、対アジア関係をはじめとした国際環境からいっても、戦後日本のあり方はアメリカの影響下でつくられた。
そこで戦後日本のナショナリズムは、とくに対米関係において傷つくわけです。
(略)
その傷ついたナショナリズムを、どう満足させるのか。
アメリカに従属して現在の体制が維持されていることは保守側も意識せざるを得ないから、反米や日米安保条約解消は正面からは主張できない。
そこで「日本の誇り」を回復する代償行為が求められる。
その代償行為は、保守派の場合、一つは自衛隊の増強と改憲の主張でした。ところがこれは結果として、ますます対米従属を深めることになってしまう。
そしてもう一つの代償行為は、十五年戦争(大東亜戦争)の正当化をうたう歴史問題や、国旗・国家や靖国神社といったシンボルの政治なのですが、
それをやるとアジア諸国との関係がより冷却化する。
そうなると日本は独自に外交を開くことができないので、またアメリカに頼るというかたちにならざるを得ない。
(略)
これがいわば戦後の日本のナショナリズム・スパイラルであると考えています。』
(小熊英二 「対話の回路」 新曜社:刊 より)